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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』23

last update Last Updated: 2025-01-20 17:58:55

「仕事があるから行くけど、また空き時間に来るからね、芽衣子」

すっと立ち上がったリュウジ。

「もう。いいよ」

ポツリとつぶやとリュウジは無表情で見つめてきた。

「なにが?」

「来なくていい。リュウジが来ると目立つし週刊誌に撮られるよ」

「もう、撮られたけど。近いうちに載るんじゃない」

なぜに、そんなに堂々としているのだろう。

「何か食べたいものあれば持ってくるから、メール届くようにしてね」

「リュウジ」

「ん?」

「結婚したいって言ってごめんね」

「……謝るようなことじゃないよ」

「幸せになってね」

「いろいろ言い返したいところだけど、時間がないから行くから。俺は芽衣子と別れたつもりはないからね。じゃあ、行ってくるね」

リュウジは、部屋を出て行った。

きょとんとする私。

今の話の流れからすると……付き合ってるみたいな口ぶりだ。

面倒をみてくれたし、優しいけれど。

宝石店で女性といるところも目撃したのだから、流されてはいけない。

リュウジは優しいから私を放っておけないのだ。

ナースが入ってきた。

「ご気分はいかがですか?」

「かなりいです」

体温計を渡される。脈拍を調べて点滴チェックをしてくれた。

「顔色もいいですね」

「ありがとうございます……」

にっこり微笑んでくれるナースの笑顔に安心して、癒される私。そこにドクターが入ってくる。

かなりイケメンで若いのに胸には副医院長と書かれていた。

「おはようございます。主治医の高瀬です」

「……おはようございます」

「昨晩はかなり高熱だったため入院していただきました」

そのタイミングで体温計が鳴った。熱は平熱に下がっていた。

「食事はできそうですか?」

「はい」

「それであれば、明日に退院しても問題ないので、今日一日は安静にしていてください」

「わかりました」

ニヤリと笑い出すイメケンドクターさん。

「な、なんでしょうか?」

「ずっと心配して付き添っていましたよ。素敵な彼氏さんですね」

「はい?」
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    「妹が置いていった服ならあるけど。サイズ合うかな」「勝手に借りていいのかな?」「心配なら聞いてやるか」スマホで電話をはじめる。「あ、舞? 久実に服貸していい?」『えー! 家にいるの? 泊まったってことは、えーなに? 付き合ってるとか~?』ボリュームが大きくて話している内容が聞こえてしまう。「付き合ってくれないけど、まぁ……お友達以上だよ。じゃあな」お友達以上だなんて、わざとらしい口調で言った赤坂さんは、得意げな顔をしている。「……じゃあ、お借りするね」黒のニットワンピース。着てみるとスカートが短めだった。ひざ上丈はあまり着たことがないから恥ずかしい……。着替えている様子をソファーに座って見ている。「見ないで」「部屋、狭いから仕方がないだろう」「芸能人でお金もあるんだから引っ越ししたらいいじゃない」「結婚する時……だな」その言葉にドキッとしたが、平然を装った。私と……ということじゃない。一般的なことを言っているのだ。メイクを済ませると赤坂さんは立ち上がって近づいてくる。見下ろされると顔が熱くなった。「可愛い。またやりたくなる……」両頬を押さえつけたと思ったら、キスをされる。吸いつかれるような激しさ。顔が離れる。赤坂さんの唇に色がうつってしまった。「久実……愛してる」……ついつい私もって言いそうになった。「せっかく 口紅塗ったのに汚れちゃったじゃないですか」 私はティッシュで彼の唇を拭った。 すると 私の手首をつかんで動きを止めてまた さらに深くキスをしてきた。「……ちょっ……んっ」「久実、好きって言えよ」「……時間だから行かなきゃ」

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』78

    久実sideふんわりとした意識の中、目を覚ますとまだ朝方だった。今日は休みだからゆっくり眠っていたい。布団が気持ちよくてまどろんでいると、肌寒い気がした。裸のままで眠っている!そうだった……。また、赤坂さんに抱かれてしまったのだ。逃げればいいのに……逃げられなかった。私の中で赤坂さんを消そうと何度も思ったけど、そんなこと無理なのかもしれない。すやすや眠っている赤坂さんを見届けて、ベッドから抜けようとするとギュッとつかまれた。「どこ行くつもりだ」「帰る」「………もう少しだけ。いいだろ」あまりにも切ない声で言うから、抵抗できずに黙ってしまう。強引なことを言ったり、無理矢理色々したりするのに、どうして私は赤坂さんのことがこんなにも好きなのだろう……。もう少しだけ、赤坂さんの腕の中に黙って過ごすことにした。太陽がすっかり昇り切った頃、ふたたび目が覚めた。隣に赤坂さんはいない。どこに行ってしまったのだろう。自分のスマホを見るとお母さんから着信が入っていた。「……ああ、心配させちゃった……」メールを打つ。『友達と呑みに行くことになって、そのまま泊まっちゃった』メッセージを送っておいた。家に帰ったら何を言われるだろう……。恐ろしい。「おう、起きてたのか」赤坂さんはシャワーを浴びていたらしい。上半身裸でタオルを首にかけたスタイルでこちらに向かってきた。あれ……昨日は一人じゃ入れないって言ってたのに。なんだ、一人で入れるじゃない。強引というか、甘え上手というのか。私はついつい赤坂さんに流されてしまう。そんな赤坂さんのことが好きなのだけど、このままじゃいけないと反省した。「今日、休みだろ?」「……うん」「じゃあ、大樹の家行こう」「は?」唐突すぎる提案に驚いてしまう。「暇だったらおいでって連絡来たんだ。美羽ちゃんも久実に会いたがってるようだぞ」美羽さんの名前を出されたら断りづらくなる。優しい顔でおいでと言ってくれたからだ。「でも……服とかそのままだし……」「そこら辺で買ってくればいいだろ」「そんな無駄遣いだよ」まだベッドの上にいる私の隣に腰をかけた。そして自然と肩に手を回してくる。「ちょっと……近づかないで」「なんで?」答えに困ってうつむくと赤坂さんは立ち上がってタンスを開けた。

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